『日本人ルーツの謎を解く』(長浜浩明著)B−時代を逆行していた自分
2010-07-02


8割くらい読み終えたでしょうか。
 よくよく考えてみると、とても読みやすいのです。

 日本人のルーツといえば、さまざまな要素が入り混じり、複雑かつ難解で理解し難い、という印象がありましたが、この本は違います。
 目的がはっきりしているので、内容に一貫性があり、曖昧な表現も無く、また、しつこくない程度に、肝心な部分を繰り返し述べています。

 人骨の形態比較による形質人類学の問題点を、大きく取り上げてきましたが、DNAの研究による「分子人類学」についても、問題点を挙げています。
 分子人類学は、人類の発祥を探る上で、もっとも客観的で、信頼のおける研究方法だと思っていたのですが、必ずしもそうではないようです。
 結局のところ、どんな研究においても、採取したデータから何をどう読み取るかによって、結果は大きく変わってくる、ということなのでしょう。

 そこで、ふと思い出したのが、このブログを始めるきっかけとなった、日本人の起源に関する自分なりの探求ですが、更にその元を辿れば、分子人類学による「人類の起源」に関わることでした。
 分子人類学により、人類のルーツがアフリカにある事を知り、それでは、日本人はいつ、どこを通って、日本列島へたどり着いたのか、そんな探究心へとつながったのです。

 そして手に取ったのが、次の二冊でした。

 『日本人になった祖先たち』 篠田謙一:NHKブックス
 『DNAから見た日本人』 斉藤成也:ちくま新書

 『日本人になった祖先たち』については、『日本人ルーツの謎を解く』の中で、問題点を大きく取り上げられています。
 随分まえに読んだ本なので、記憶に薄いところも多いのですが、どこか釈然としない、スッキリとしなかった印象が残っていたのは、その内容に矛盾があった為なのかもしれません。

 その矛盾に気づく余地はありませんでしたが、少なくとも最新の研究成果である分子人類学であったにも関わらず、そこで解決しない問題を、過去の研究成果に求めてしまったのが、悔やむとこです。

 過去の研究成果とは、主に形質人類学によるもので、人骨の形態を比較することにより、日本人の起源を求めるものです。
 今となっては、はっきりと分かる事ですが、見当違いも甚だしいとしか言いようがなく、理解が進むどころか、複雑に矛盾を抱えた研究成果に頭が混乱しても仕方がなかったのかも知れません。

 今、はっきりと迷う事無く言えることは、

「弥生時代の変革を行ったのは、渡来人ではない」

 ということです。

 渡来人によって水稲農耕が伝来した訳でもなく、渡来人によって縄文人が駆逐されるなどもってのほかで、混血による形質の変化も無いに等しい、ということです。
 そもそも在来の日本人に影響を与える程の渡来人など、存在しないのですから。

 こんな言い方をすると、『日本人ルーツの謎を解く』を真に受けているのではないかと思うかもしれません。
 でも、そうではないんです。
 今まで、いくらかの書籍に触れ、自分なりに考え、理解しようと思いつつも、何かすっきりしない漠然としたものがあったのですが、それらが一つ一つ紐解かれてきているのです。

 何しろ、渡来人の存在を前提とした各著名人による矛盾を含んだ説が、渡来人の存在を否定することで、その矛盾が解消できるのです。
[日本人の起源]
[本]

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