『縄文人と「弥生人」古人骨の事件簿』B・・・大量渡来説の否定
2009-04-21


前回の予告通り、まずは、第1章の前半からまとめてみます。
この本のタイトル『縄文人と「弥生人」』らしい内容は、厳密にはこの章だけかもしれません。

まず、結論から。
著者(片山 一道氏)は、縄文時代の晩期頃より、大量に渡来人(朝鮮南部などより)がやってきて、在来の縄文人に置き換わるようにして人口を増やし、後の日本国の形成に関わった、という”大量渡来説”を否定しています。

身体的特徴については、近代の日本人の身体的特徴の変化を挙げて、弥生時代にも、同様に縄文人が、いわゆる「渡来系弥生人」的な特徴へ変化しうると述べています。

そもそも、身体的特徴について、大きく意見が分かれるのは、弥生時代初期の人骨資料が極めて少ないことによります。
縄文時代の人骨と、弥生時代後期の人骨を比較すると、その特徴に大きな違いがあることによります。
その弥生時代後期の人骨が、朝鮮南部で発見される同時期の人骨と特徴が似ていることが、渡来人説の一つの理由となっています。

そこで、問題となる弥生時代初期の人骨資料を二点、挙げています。
【新町遺跡(北部九州の福岡市近郊の糸島半島)】
・縄文人そのものとも言える、女性の成人人骨
・縄文人に似た印象を受ける顔立ちの、男性の成人人骨
・両人骨ともに、縄文人と共通する抜歯型式

【新方遺跡(神戸市、明石川のほとり)】
・縄文人と考えられる顔立ちの成人男性二体
・縄文人と同様の抜歯型式
 新方遺跡の発掘については、第2章で詳しく取り上げられているので、あらためて考察したいと思います。

以上のように、数が少ないことは認めつつも、弥生時代初期に発掘される人骨の特徴に、縄文人的な特徴を備えていることを、大量渡来説を否定する一つの理由としています。

最後に、個人的な見解を簡単に述べておきます。
他の文献なども考慮すると、大量渡来説に否定的な意見には、賛同できます。むしろ、そうである理由を見つけたいという意思すらあります。
しかし、客観的に見ると、まだまだ説得力が十分とはいえないのではないでしょうか。
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