『白村江敗戦と上代特殊仮名遣い』の著者である、藤井游惟氏より、今年1月に行われたセミナーのレジュメをいただきました。
その題名が『弥生人と日本語の形成−日本語南方系縄文人語起源説−』というもので、その本題については、またの機会に触れるとして、もっとも気になったところが、ピジン語とクレオール語に関する記述です。
まず、なぜピジン語とクレオール語の話題がここから出てくるのかと言うと、「東北方言はクレオール日本語」である、という藤井氏の説によります。
失礼ながら、東北方言がクレオール日本語であるのかどうか、という部分についても、またの機会にさせていただくとして、その根本であるピジン語とクレオール語の定義といいますか、解釈について気になった事を書かせていただきます。
少々長くなりそうですが、本文を抜粋させていただきます。
----- 以下、本文より ------
ピジン語・クレオール語
ピジン語(pidgin language):
現地人と貿易商人などの外国語を話す人々との間で異言
語間の意志疎通のために発生する混成語。
狭義には、香港などの中国人がイギリス人と話す為に用
いていたブロークンな英語「business English」が「pidgin」の語源
クレオール語(Creole language):
ピジン語が広く使われる社会環境で育つと、ピジン語を母語として話す子供達が現れ、当該社会全体の共通語として広まる場合がある。この母語として話されるピジン語がクレオール語
Creoleというのは、中南米の植民地生まれのヨーロッ
パ人、或いは人種を問わず中南米の植民地人のこと。
母語として話され、社会全体に広まった混成語が最初
に確認されたのが、元フランス領ハイチの「ハイチ語」
だったため、このような言語を「クレオール言語」と呼
ぶようになった。
従って、狭義の「クレオール語」とはハイチ語のこと。
●クレオール語の語彙には、宗主国語と現地語の単語が混じるが、文法規則や音韻規則はそのどちらとも異なる「第三の言語」である。
(「ザ・シュートは、ラディカルなコンセプトで、ナウいサウンドをクリエイトするスーパーユニットである」 これは、外来語を多用しただけの日本語であり、ピジンでもクレオールでもない。一般言語学を全く勉強していない国語学者などには、このようなものをピジンやクレオールと混同している人間が多いので注意)
●母語として話されるクレオール語は「完全な言語」である
・・・当該言語を用いて表現できないことは何もない
(中略)
●ピジン語・クレオール語が発生する社会環境
@ 植民地などに於いて、同一社会で異言語話者が共存し、日常的にコミュニケーションをとる必要があり、
A しかも「正しいA語」「正しいB語」を教える教育制度がない場合、
B 現地人が政治的に宗主国人)の言語を耳コピで模倣することによって、まずピジン語が発生し、
C 宗主国人が、ピジン語の文法や発音の誤りを訂正しないで放っておくと、現地人にはそれが定着してしまい、
D やがて「変な宗主国語」を母語として話す世代が現れて、社会全体にその言語が広まってゆく
8〜12世紀の東北地方はまさに、蝦夷が日本語を耳コピで模倣することでクレオール語が発生する社会状況にあった。
----- 以上、本文より -----
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